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「教養」を育て、自立へと導く伴走者たれ

滝高等学校_校長
滝高等学校 校長 戸田 誠 先生

私たちには生徒の夢を叶える“使命”がある

もともと本校は、産業文化の発展に寄与する人材の育成を目指すべく、実業校としてその産声を上げました。ただ、大学進学に力を入れるようになってからも一貫して変わらぬ思いがあります。

それは、私たちには生徒の夢を叶える“使命”があるということです。毎年、多くの生徒たちが本校の門を叩いてくれますが、そのほぼ全員が進路として大学進学を希望しています。もちろん夢の成就は大学のさらに先にあるものですが、その過程として進学を求めているわけですから、その期待に応えるのは当然の務め。さらに言えば、入学時に抱いた期待をさらに上回る成果をもって応えたいと考えています。

しかしそれは、大学進学のみを第一義に考え、生徒たちに受験一色の学校生活を送らせるということではありません。学力の定着や伸長は大前提ではありますが、むしろ「それ以外」を非常に大事にしています。本校にいわゆる“進学校”としてのイメージを抱いている方からは、驚かれることも多いですね。

「教養講座」は我が校らしさの体現

その具体例として代表的なのが、恒例の「土曜講座」ではないかと思います。特定の土曜日に60分×3コマの講座を開催しているもので、生徒の参加は任意。もうかれこれ20年来の取り組みです。

内容は大きく二つに分かれており、一つは「学習講座」。名前のとおり、教科学習のサポートを行うものです。補習授業や英検などの対策、高3になると志望校別や分野別の受験対策を行う日もあります。

もう一つが「教養講座」。教科学習の枠を越えてさまざまな取り組みを実施しています。医師や弁護士など、社会の第一線で活躍されている方のトークイベントや、社会問題のディスカッションなどを行ったりもしますが、特に本校らしい一面が表れているのが教員オリジナルの手作り講座です。

例えば工作をしたり、楽器の演奏を楽しんだりするほかにも、将棋好きの教員が開講する将棋講座もありました。ときには校外に飛び出し、昆虫採集やサイクリングをすることもあります。

子どもたちは本質的な「やりたい」「知りたい」を持っている

一見、レクリエーションの延長に見えるこの講座ですが、「教養」と名前がついているところに意義があります。それは、通常の授業だけでは簡単に深められない力を身に付けて欲しいからです。工作でも音楽でも将棋でも構いません。何らかの目的を見据えて試行錯誤し、主体的に考え、問題解決に導くという経験をさせてあげたいのです。

こういう取り組みを行い、楽しそうにしている生徒たちの姿を見ていると、改めて教育の本懐に気付かされます。「やはり子どもたちは『やりたい』とか『知りたい』とか『できるようになりたい』という気持ちを、根源的なところで持っている」と。まさにその気持ちの発露こそ「教養」の一部であり、育てるべき力だと思います。そして、教養あってこその学力、大学進学であるというのが本校の考え方です。

面倒見の良さが自慢も、決して甘やかすことはしない

そのような教養へのアプローチを行っているせいもあるのかもしれません。本校は代名詞的に「面倒見の良い学校」と呼ばれることが多いです。

特に中学においては、入学前に進学塾で力をつけてきた生徒が多いため、良くも悪くもシステムやテクニックでの学習習慣がついています。「知りたい」「やりたい」という教養をベースにした自立的な学習がまだ身に付いていない状態です。そこへいきなり「自分で考えなさい」「主体性を大事に」と言われても、生徒は戸惑います。したがって、最終的な自立ができるように最初は「導く」スタンスです。それを生徒の成長過程を見極めながら寄り添っていくので、その姿勢が面倒見の良さと評されるのでしょう。

ただ、何でもかんでも手取り足取り助ければ良いというものでもありません。近年は「叱らない教育」が大切だという考えもありますが、それもバランスを考えたうえでのこと。生徒を認めて褒めるところは褒め、叱るべきときは叱る。それが「導く」ということだと思います。

例えば本校では、定期試験の結果をふまえて追試を行うことがあります。その際もあそこをやれ、ここを覚えろと丁寧に再レクチャーするのではなく、あえて「もう1度勉強し直してきなさい!」と程よく突き放していましたね。何が足りなかったのか自分で考えてもらうためです。

教員として働く喜びを感じつつ、卒業式では涙腺崩壊

本校の教育をキーワードで示すなら「自立に向けた伴走」であると言えるでしょう。このような教育を大事にしているからこそ、教員には常に生徒を深く「観察」し、何が必要か考え続けられる力を期待します。

加えて、ぜひとも自身の専門教科を極めて欲しいですね。本校の学びが目指すのは試験で点を稼ぐことではありません。大事なのは各教科の先にあるもの、学問としての広がり、あるいはバックボーンを深く理解し、かつそれを生徒たちに伝えられること。「学ぶこと」の楽しさを語れる人であって欲しいです。

また、本校は中高一貫校です。特に中学からの入学者であれば、6年間という長い年月になります。ついこの前まで小学生だった子が、選挙権を持つ年齢に至るまでの過程を、共に過ごすことができるわけですよね。そこに「伴走」し、彼らが「教養」に目覚めていく姿を間近で見られるのは、言葉では言い表せない感動です。卒業式では、私も含め涙腺が崩壊する教員が続出しますからね(笑)。

これから教員を指す方たちには、「教員になって良かった」という喜びを感じられる学校に出会って欲しいですね。

(このインタビューは2022年7月に行いました。)

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