校訓「真剣味」に立ち返り、真の文武両道校として
「真剣味」――真実・真理を求め続ける「知育」、剣道(剣術)の修練に由来する「体育」、人間味を示す「徳育」、すなわち「知・体・徳」のバランスが取れた人間形成を目指す、本校ならではの造語です。これを校訓とし、「学術とスポーツの真剣味の殿堂たれ」を建学の精神としています。
ただ、あえて包み隠さずお話しすると、学校として「剣(体育)」の部分に注力するあまり、「真(知育)」が伸び悩んだ時期もありました。そこで改めて学業指導にも力を入れ、真の文武両道校を目指してきたという歴史があります。幸いにして近年は、地元の名古屋大学をはじめとする国公立大学や難関私立大学、医学部などへの進学者が着実に増えてきました。しかも、部活動に日々汗を流しながら、受験勉強も頑張ってこれらの進路をつかみ取った生徒たちが多数います。
創立時の理念や理想の実践に立ち返り、より本校らしいあり方に近づけたと、手ごたえを感じているところです。
“外”での経験を生かし、柔軟な姿勢でアイデアを取り入れる
このような学校改革を成し得た要因の一つとして、「学校づくりのために、良いと思ったものは積極的かつ柔軟に取り入れよう」というスピリットがあると思います。
私は2018年度から校長に着任いたしましたが、それまでは公立校で教職に就いていました。実は本校が母校でもあります。愛知県下には55校の私立高校がありますが、私のように生え抜き(卒業生)の教員でありながら、公立校も経験してきた人間が校長を務めるケースはかなりめずらしいようです。「外(公立校)を知っている」というキャリアは、視野を広く持った学校運営において、とても役立っていると感じますね。
公立校には公立校の良さがありますが、制度上、独自性を出しにくい部分もあります。致し方ないこととは言え「もっとこうできればいいのに」と忸怩たる思いを抱くこともありました。そうした理想を、私学であり母校でもある本校で思い切り生かしている感じですね(笑)。
例えば進路指導についても、他校の先生方と勉強会を開催するなどしています。他にも、若手教員から管理職まで「これがあるといいよね」「これがやってみたい」と誰もが提案できる「アイデアボックス」の制度を作ったりもしました。
教育の基本は、あくまで「人」にあり
ただ、教育の本質は「人」にあるもの。どれだけ制度を整えようと、素晴らしい環境を作ろうと、それだけで教育の質は上がりません。その制度や環境のもとで働く「人」がすべてです。だからこそ本校では、教員の採用には強い思いを持って臨んでいます。私の仕事の8割は採用にある、と言っても過言ではありません。求めたいのは、表面的な学歴やキャリアよりも「仲間として共に働ける人」であることです。
本校には、「ルールを守る」「ベストを尽くす」「チームワークをつくる」「相手に敬意を持つ」で構成される、「四大綱」という人間教育の骨子があります。これを生徒に求める以上、本校教員にも人材像としてそれを求めるのは当然です。社会の変化によって求められるスキルは多様化している現代ですが、これらはどんな時代でも不変的に求められる人としての素養ではないでしょうか。
例えば社会通念上の一般常識がある(ルールを守る)、常に全力で事にあたる(ベストを尽くす)、教員・生徒・保護者を含めどんな人の間にも入っていける(チームワークをつくる)、なれ合いや儀礼的なものではない心のこもったあいさつができる(相手に敬意を持つ)人を、仲間として迎えたいです。
やりすぎだと言われるくらい、徹底的に生徒に寄り添って
生徒に対しては「決して友達ではない、しかし大きな隔たりを作らない」関係性を築いてほしいですね。権力や立場によって縛らない、親しいけれど尊敬される存在、上下関係ではなく寄り添う存在です。「どこにも負けない、やりすぎだと言われるくらいの寄り添い」を期待しています。
その一環として私も、校長室の執務室は常に扉を開放しています。生徒に気兼ねなく訪ねて来てほしいからです。「仲間」である教員とも壁を作りたくないですし、職員室のにぎわいが聞こえないような、密室化された校長室にしたくなかったんですよ。
学校の強みは、「仲間」としての母集団の強み
教員という仕事のやりがいは「生徒が入学時に持っていた力を、自分達の働きかけによって少しでも伸ばし、送り出していけること」だと思います。特に本校においては、その「寄り添い」の力で、生徒の悩みも、つまづきも喜びも、すべて共有していけるはずです。これは、人工知能には決して追い付けない部分だと思います。その成果か、先ほど進学実績が向上したと申しましたが、実は本校で最も伸びしろが大きいのが、公立校受験で希望が叶わず、本校に入学してきた生徒たちなんですよ。
学校の強みは、一人のスーパーマンの存在ではなく、母集団の質にあります。すなわち「仲間」としての強さです。もし、こんな本校の「仲間」になることに魅力を感じていただけるなら、ご自身の可能性を、ぜひ本校で思い切り発揮なさってください。あなたとお会いできる日を、楽しみにしています。
(このインタビューは2024年6月に行いました。)