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生徒も先生も。みんな一緒に「やってみなはれ」

雲雀丘学園中学校・高等学校 校長 中井 啓之 先生

「やってみなはれ」「生徒の心に火をつけろ」

「やってみなはれ」――これは本校の初代理事長・鳥井信治郎(サントリーホールディングス創業者)の言葉で、「なにごとも失敗を恐れず挑戦してみよう」という意味です。また鳥井理事長は“孝道(親孝行)”を大切にしていました。誰かに感謝し、人を思いやる心を育てる人間教育のことです。

一方で初代の板倉操平校長は、子どもたちを職人の手で作られた抹茶茶碗に例えました。生徒はそれぞれが唯一無二の存在であり、学校は同じものを大量生産する工場ではないという考えです。そうして残した言葉が、「生徒の心に火をつけろ」でした。

本校は今でもこれらの精神を教育の基本理念とし、生徒の人間性を育てること、生徒が主体的にチャレンジできる学校であること、そして教員がその模範を示せるような存在であることを大切にしています。

探究を中心とした、アウトプットありきの学びを大切に

そうした教育理念のもとに、知識のインプット以上にアウトプットを重視してきたのも本校らしい一面だと思います。その核となるのが探究学習で、現在のように注目される以前からかなり熱心に取り組んできました。学力によるコース制をとらず、『一貫探究コース』(中学から入学)と『文理探究コース』(高校から入学)で構成されています。中1から高3まで、どの大学を目指そうとどの学問分野に進もうと、生徒の主体的な知的関心,意欲や挑戦を学びの軸に据えたいと考えているからです。

例えば『探究ゼミ』は、その具体例の一つ。教員がそれぞれの専門性や得意分野を生かして開講するもので、生徒は興味のあるテーマ(ゼミ)を自由に,学年に関係なく選び参加します。テーマは「生物」「法律」「経済」などのほか、「宝塚歌劇」「模擬国連」、図書館司書が開く「ビブリオバトル」などユニークなものもあります。前職での経験を生かして「コンビニの経営」をテーマにする教員や、生徒と一緒に学校広報に取り組む広報担当教員もいます。実は、今年度のパンフレット(学校案内)のうち2ページは、生徒が企画制作をしています。 また、この『探究ゼミ』とは別に、大学や企業と連携して行う『探究プロジェクト』もあります。

誰を主語で考えているか、生徒はすぐに見抜くもの

生徒の全員が大学進学を目指していますが、本校は大学附属校ではありません。したがって、学力の定着は大切にしていますが、こうした探究学習で得た力や成果、意欲を武器に、総合型選抜で進路を勝ち取る生徒も多いです。



国立大学や医学部、私立の最難関大学へ進む生徒も多いですが、本校ではそれを進路“実績”とは言いません。なぜなら“実績”とは学校が主語になる言葉だからです。主語はあくまで生徒であるべきで、その考えから本校では進路“実現”という表現をしています。小さなことのようですが、生徒はこうした些細な言葉から本質的な意図を敏感に感じ取ります。学校や先生が何を(誰を)大切にしているのかを見抜くのです。



「やってみなはれ」の精神にしても、教員自身がそれを体現できなければ生徒からの信頼は得られません。何か新しいことを始めようとすると、何かと許可や合意が必要で手間がかかるのが学校という組織です。しかし本校ではできるだけそういう障壁をなくし、教員たちには「生徒のためになるなら何でもやってみよう」と伝え続けています。むしろ、もっとガツガツと提案にしてほしいくらいです(笑)。

師弟同行。文化祭の出し物も生徒と一緒に

繰り返しになりますが、学校の主役は生徒です。そのため本校で教員を目指す方には、生徒との関係性をしっかり作ることを期待しています。

実際に本校では「師弟同行(教師が生徒と共に歩み、共に学び合っていくこと)」の考えのもと、日々の生活や行事も生徒と一緒にやりますし、文化祭では演劇やダンスに生徒と一緒に出演したり、教員がバンドを組んで演奏したりする光景がよく見られます。だから教員もいきいきしていますし、校長の私も楽しく仕事をするように心がけています。

さらに生徒の後ろにいる保護者との関係性、教員同士の関係性も大切です。探究に力を入れるなら、学校外の組織・人との関係性を構築する力も大事でしょう。私は常々、本校の教員たちに「フットワーク」「チームワーク」「ネットワーク」の3つの「ワーク」が大切だと伝えています。ベテランも若手も関係なく持っていてほしい力です。

生徒一人ひとりの個性に応える、多様な教員のいる学校に

本校はこれまで、よりよい学校にしようとさまざまなことに挑戦しながら努力を重ねてきました。努力の甲斐もあってか、おかげさまで対外的にも注目される学校になってきました。ですから誰に見られても恥ずかしくないよう,人として正しくあってほしいですし、「雲雀丘学園の教員なら、これぐらいのことはできるはず」という当然の期待に応えてほしいと思います。

生徒についても「求める生徒像」と言うより「いろいろな生徒に来てほしい」と考えています。英語が得意な生徒、理科や鉄道が大好きな生徒、コミュニケーションが苦手な生徒など、さまざまな個性がありますが、それぞれがしっかり伸びていくのが本校です。

そうした生徒の個性に応えるためにも、教員の顔ぶれも多様であってほしいですし、いろいろな経験や学習歴のある人に来てほしいです。そして、その個性をいかんなく発揮し、教員として本校で成長してもらえたらと思います。

(このインタビューは2024年7月に行いました。)

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