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オンライン授業⑦オンライン授業実践事例 ~オンデマンド型編~

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2021/03/19

2021/3/19 公開

オンライン授業にはさまざまな形があります。大きくは「Zoom」などを用いた同時双方向型か、あらかじめ用意された授業動画などを視聴するオンデマンド型に分類できるでしょう。前回のコラムでは主に同時双方向型に注目し、その事例をご紹介しました。そこで今回は、オンデマンド型について全国の取り組みを追ってみます。どのような取り組みや気づきがあったのでしょうか。

「オンライン=同時双方向型」とは限らない

「オンライン授業」と聞くと、いわゆる同時双方向型をイメージされる方は多いと思います。
しかし、過去のコラムでもご紹介したように、実際のところコロナ休校中に同時双方向型を実施できた公立校はわずか5%。一方でオンデマンド型は39%と、休校中のオンライン授業は、実はオンデマンド型のほうが主流でした。

なお、この数値は休校当時の調査によるものです。公立・私立ともに現在は改善が進んでいます。傾向として全国的に私立校のほうがオンラインの環境整備は早く、弊社が私立中高106校を対象に行った最新の調査では、各実施率は同時双方向型75%、オンデマンド型85%(両方実施した学校も含む)という結果となりました。しかしここからも、オンデマンド型の実施率のほうが高かったことがうかがえます。

総じて、一刻も早く「学びを稼働」させねばならない状況下で、かつ各校や家庭の通信・機器環境なども加味すると、オンデマンド型のほうが導入しやすかったためと予想できます。

しかしそれは、同時双方向型ができないから仕方なくオンデマンド型にした、という意味ではありません。オンデマンドはオンデマンドならではの良さがあります。事例をもとに、その特長を探ってみましょう。

同時双方向型とオンデマンド型に分かれるオンライン授業

特定の時間に、特定の場所にいなくていいという強み

オンデマンド型の基本形は、学習(授業)動画の視聴。スタディサプリやNHK講座などを利用し、視聴すべき動画コンテンツを期限とともに指示します。

こうしたスタイルの利点は「生徒のペースで学習できること」でしょう。先生方からも「一期一会の対面型授業と異なり、分かるまで繰り返し見ることができる」「生徒が自分の都合の良い時間に受講できる」という声が多数聞かれました。

また動画ゆえに、再生速度の変更や巻き戻し、一時停止も自由自在ですから、授業内容の聞き逃し・見逃しが発生しません。リアルタイム授業の弱点である、欠席の影響も受けません。疲れているときは、ベッドに寝転びながら受講もできます。「特定の時間に、特定の場所にいなくていい」というのは、オンデマンド型ならではのお家芸なのです。

時間と場所を選ばず、受講を可能にするのがオンデマンド型

実際に動画視聴しているかの確認はワンセットで

しかし一方で、時間や場所の制約を受けないからこそ、生徒の主体性に委ねられる部分も大きく、先生の目が行き届きにくい側面も。指示しても動画を見ない生徒も出てきます。そこに対するフォローは必要です。

多くの学校で見られたのは、「授業内容をふまえた課題の提出とセットにする」「質問は別途受け付ける」というものでした。これらはGoogle Classroomなどのグループウェアを使ってのやりとりが多かったようですが、「すらら」など、課題進捗や理解度がクラウド上で共有・確認できる演習ツール(オンライン自習教材)を用いた学校もありました。

中には、発展的な挑戦を見せたところも。たとえばN学園では、同時双方向型と併用。「オンデマンド型で自学予習し、同時双方向型で応用や発展に取り組む」という、反転学習モデルとして応用しています。

生徒が一人で学習することへの配慮が重要

オリジナルの授業動画を制作する先生も

配信する授業動画を自ら作成する先生方もおられました。やはり「先生」という職業の血なのか、コロナ対応で目の回る忙しさの中でも「自分の授業を届けたい」という想いは強かったのでしょう。動画は、通常の対面型と同じように教室で授業を実演して録画するパターン、Power Pointなどでプレゼンテーション資料(授業スライド)を作り、音声解説を乗せるパターンなどが主流でした。また、配信はグループウェアやロイロノート・スクール、あるいはYoutube上に限定公開してURLを案内するようにした先生が多かったようです。

休校で使われなくなった、1フロア横並びの複数の教室を急きょ「撮影スタジオ」にしたH学園や、「休校空けの後も、補習などはこれで対応(自宅受講)できるのではないか」と言うY学院のように、学校全体を挙げてこれに取り組む学校や、今後に可能性を見出した学校もあります。

もちろん、すべての先生がICTやデジタル機器に明るいわけではありません。それでも、H中学のある男性教諭は反省を込めてこう明かします。「Youtubeに動画をアップする方法すら知らなかったが、やってみると意外にできた。苦手でも取り組む姿勢を自ら示す、それでこそ教員ではないかと改めて感じた。(コロナ以前の)自分は受け身になっていたかもしれない」。

教室を授業動画撮影スタジオに一時転換した学校も

オンライン授業はあくまで「授業」。「学び」を届ける視点を忘れずに

しかし、注意しなければならない点も。オンライン授業はあくまで「授業」であり、子どもたちの学習を止めないのが主な目的であることです。特にオンデマンド型は、一方的に教材(動画)が送られてきて、生徒がそれに取り組むのが基本の構図です。

「生徒たちの学びを止めるな!」は、コロナ下の学校で半ば全国共通のスローガンのように叫ばれましたが、学校における広義の「学び」とは教科学習だけではないはず。J学園の教諭も「休校中のオンライン授業の実施で新たな可能性が見えたことは事実だが、それはそれ。電話で話すなど、直接的なコミュニケーションを決して忘れないようにしていた」と言います。そんな想いを反映してか「教員が教えることの必要性(=存在意義)に疑問を感じるようになった」という声も少なくありませんでした。

折しも、昨今の教育改革で、教員の役割は「ティーチング」から「ファシリテーション」へ変遷していくのではないかとも指摘されています。オンデマンドで授業はできると“立証されてしまった”ことは、学校教育の新たな方向性を示しているのかもしれません。

続きはこちら⇩
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