2021/4/9公開
第3波、第4波と一進一退を繰り返す国内のコロナ問題。緊急事態宣言や休校が解除されても、もはやオンライン授業はそれとは関係なく新たな授業手法の一つとして認知されつつあります。前回の記事ではそんな背景をふまえ「アフターコロナもオンラインを活用する」ことに着目してお届けしました。では、実際にどんな活用ができるのでしょうか。アフターコロナで期待される「オンラインと対面のハイブリッド」でできそうなことや、すでに取り組まれている事例などをご紹介します。
コロナ休校時のオンライン経験を、対面でも活かす発想を
コロナ休校と共に、戸惑いながらも始まったオンライン授業。公立に比べてフレキシブルに動きやすいという強みを活かし、私学での動き(導入)は特に早いものでした。
確かに最初は、あくまで「対面授業ができないから仕方なく」という代替案だったかもしれません。しかし、実際にやってみると「これは使えるな!」「こんな使い方もできるぞ!」という新たな発見が多数あったのも事実です。同時双方向型、オンデマンド型とも、多くのユニークな実践事例が報告されています。
しかし大事なのは、それを「次」へどう繋げていくかではないでしょうか。休校が明け、対面で授業ができるようになったことで、せっかく見え始めたオンライン授業案がほこりをかぶってしまうのはもったいないことです。
とはいえ、目の前に児童・生徒がいるのにオンラインというのも違和感があるかもしれません。そこで注目されているのが、オンラインと対面を並行して、あるいは掛け合わせて行う「ハイブリッド授業」です。どんな実例があるのでしょうか?
ハイブリッド授業の分類「①ブレンド型」
実はハイブリッド授業は、すでにある程度分類できるところまで検証が進んでいます。大まかに分けると、そのカテゴリーは三つ。「①ブレンド型」「②ハイフレックス型」「③分散型」です。
「①ブレンド型」とは、オンデマンド型オンライン授業と、リアルの対面式授業を組み合わせて一つの授業にする方法です。事前に自宅などで動画や資料を見て前提知識を学習しておき、対面の場では応用やグループワークなどを行います。以前から、いわゆる「反転授業」として知られてきた方法です。
逆に、知識伝達を対面で行い、応用やワークのパートをオンライン化するケースもあるようです。他校や外部を交えた連携授業に用いれば、場所を選ばず多くの子どもたちが同時に参加できるため、学びの多様性が広がります。SDGsをテーマに、海外の提携校の子どもたちと意見交換したという学校もありました。
反転授業に限らず、授業の内容や目的に合わせて「この回は対面」「この回はオンライン」などと使い分けるケースも、ブレンド型に分類されます。
反転授業との相性が良い「ブレンド型」
ハイブリッド授業の分類「②ハイフレックス型」
「ハイフレックス(HyFlex)」とは「ハイブリッド(Hybrid)」と「フレキシブル(Flexible)」を組み合わせた造語で、直訳すると「柔軟なハイブリッド」授業という意味を持ちます。
具体的には、対面で授業を行いつつ、同時にそれをオンラインで配信するスタイルです。学習者(児童や生徒、学生)は、対面で受講するかオンラインで受講するか選ぶことができます。音楽に例えるなら、ライブに参加もできるし、自宅から生中継で視聴することもできるというイメージです。コロナ休校明け後に、主に大学でよく用いられるようになりました。
メリットはやはり、学校に行けなくても同じ内容の授業が受けられること。たとえば怪我や病気で通学が難しくても、自宅や病室から授業に参加できます。また、いまだ続くコロナ問題においても、もし無症状感染や濃厚接触者認定で自宅待機になったとしても、授業を休まなくてすみます。
授業のライブ生中継を行う「ハイフレックス型」
ハイブリッド授業の分類「③分散型」
1回の授業を対面とオンラインに分けるのが「分散型」です。たとえば子どもたちを二つのグループに分け、一方のグループには対面授業を実施し、その間にもう一方のグループは別室で関連動画をオンライン視聴、その後(または次回の授業)でグループを入れ替えるといった進行をします。
オンラインといえども万能ではありません。やはり、完全にオンラインのみで実施するには不向きだったり、難しかったりする学習もあります。たとえば実験や実習などです。しかし、この分散型であれば、講義グループと実験グループに分かれるといった授業運営も可能でしょう。
また、先行きが不透明なコロナ問題を考えると、同時に授業を受けられる人数に制限を設けたり、実習やワークでの接触を少なくしたりする必要性も出てくるかもしれません。このようなときにも、有効な手段であると言えます。
グループによって学習内容が変わる「分散型」
高まるハイブリッド型への期待
国立情報学研究所が実施した調査によると、今後のハイブリッド授業の発展に期待する声が多く集まっているようです。「オンラインで簡略化された労力を、オンライン化が難しい教科に投入できる」「出張があっても休講や補講をしなくてすむ」「留学などが制限されている環境下でも海外と繋がって学べる」「知識の伝達はオンラインで行い、対面では思考力を伸ばす授業ができる」などの意見が聞かれました。
もちろん、ハイブリッドを想定した時間割の調整や、先生側の(ハイブリッドに対する)授業スキルの向上など、課題もあります。しかし「新しいこと」に挑むにあたって、壁や課題があるのは万事共通です。それを乗り越えた先に新たな教育のフロンティアが拓けると思うと、なんだかわくわくしてきませんか? ハイブリッド授業は、そんな可能性をはらんでいます。
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