変化する日本の教育~新大学入試制度と私学~
社会が変わり・求められる新しい力
いま、社会全体が大きな転換期を迎えており、教育も大きな改革を迫られています。日本の少子高齢化・人口減少、さらにITの進化による産業構造の変容、多文化共生社会の進展、さらに昨年度からの新型コロナウイルス感染症。誰にも予測できないさまざまな変化にさらされるなか、これからの社会で必要とされる力をどのように育めばよいのかが、切実な課題となっています。
かつての日本社会では、良質で均質な商品・サービスを大量に安価に提供することが重視され、日常では「みんな一緒」な横並びが求められ、企業では指示を正確にこなす人材が重用されました。しかし、今後はオリジナリティあふれる商品・サービスが求められ、多様なニーズに対応する力が重視されるでしょう。「みんな一緒」の必要はなく、「自分らしさ」が大切にされ、多様性を包み込む社会が目指されています。
このような社会で活躍するためには、広い視野・深い教養、洞察力・感受性、自分で創意工夫する力・考えを表現する力が必要不可欠になります。これらは従来の日本の教育とは全く異なることから、教育内容を見直すことが必要となり、大学では教育内容の質向上が求められ、高校までの学校は新学習指導要領を実施、その延長にある大学入試制度も改革されることになりました。
新大学入試制度がスタート
従来の大学入試では、「身に付けた知識を用いて時間内に解答用紙を埋める」ことで、合否判定がされました。しかし、新大学入試制度では、これまでの「知識・技能」に加えて、「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」を“学力の三要素”と位置付け、「大学入試センター試験」の代わりに「大学入学共通テスト」という新しい入試が、国公立大学入学の一次選抜として行われることになりました。
2020年度に実施された「大学入学共通テスト」ですが、当初は数学・国語での記述問題や、英語の民間資格・検定試験利用が実施される予定でしたが、どちらも見送られることに。ただ、共通テストでの導入は見送りになりましたが、「個別入試(二次試験)」では、国公立大学ではほぼすべての大学で記述試験が行われ(これまでは約半数の学校が実施)、私立でも早稲田大学の政治経済学部で記述を導入したことが話題となり、入試問題は確実に変わったと言えるでしょう。英語でも民間資格・検定試験の大学入試での利用は、私立大学を中心にこれまでも行われており、英語4技能を測るという状況に変化はなさそうです。
先述のとおり、新大学入試制度の最もわかりやすい変化は、「大学入学共通テスト」が導入されたことです。また、各大学が実施する「個別入試(二次試験)」では、さらに「主体性・多様性・協働性」までを求めるとされています。
そのような力を測るため、小論文・プレゼンテーション・集団討論・面接・推薦書・調査書・資格試験等が例示されています。教育改革で新しく問われるのは、いかに自分で考えて答えを導き出せるかどうか。マークシートの選択式で答えられるようなことは、今後AIが取って代わるでしょう。AIが答えられない、正解のない問いを自分で考え、周りと協働して解決を図る力が必要だということが、この新大学入試制度から見て取ることができます。
これらの力は一朝一夕に身に付くものではありません。小学校・中学校・高等学校と長い時間をかけて積み重ねていくものであり、その期間にいかに学ぶかがカギとなってきます。
改めて感じる私学の魅力
私学の最大の魅力は時代の変化に柔軟に対応できるところです。現在のようにアクティブラーニングや探究学習に焦点が当たる前から、これまでも多くの私学は、知識を活用して自分の頭で考えさせる授業や、探究的な教育内容を実践してきました。それは、私学がどのような社会の変化にも対応できる人間の育成を目指すからこそ。そのために教科学習だけでなく豊かな感性を育む情操教育や心の教育もおろそかにすることなく、どのような時代であっても流されない、教育理念に基づいたぶれない教育を実践できるという面も、私学ならではの強みとなっています。