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コラム

大学入試改革と学校現場 | 第2回 学校はどう動いていくか

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2021/12/17
高校の廊下を進む、見通す

■この記事を書いた人
この記事を書いた人、光延栄治氏
株式会社エデュ・フィールド
代表 光延栄治
私学私塾での教職員研修会や保護者教育講演会他、多数の講演・研修を手掛ける。
カリキュラム・シラバスの再構築や授業力診断(ライブ・リモート)、定期考査の問題分析診断にも従事する教務教学のスペシャリスト。大阪市生まれ。

大学入試改革 ― 学校はどう動くべきか

―――「泰山不譲土壌、故能成其大」 《司馬遷「史記」李斯伝より》
秦の宰相・李斬(りし)が、他国者であることを理由に排斥されそうになったとき、始皇帝に対し、このように訴えたと言われています。
「小さな土くれであっても泰山は全て受け入れて、結果的に大きな山となり得ることが出来た」と。

第1回「大学入学共通テスト・再編第二章」では、今後控えている大学入試の変化について詳述しました。では、こうした新たな情報に対して「学校」はどのように動くべきでしょうか。

情報共有を阻む「忙しさの中のすれ違い」

こうした情報を講演などで展開させて頂くことを生業としている私が舌を巻くほど、各校の先生方は情報収集に余念が有りません。進路のことは進路指導部、教務に関することは教務部の先生方が高い専門性を持って情報を集めておられます。ただ、それぞれとお話しして感じるのは「分掌を跨いだ情報共有」に弱点があるということです。校務運営委員会など、横断的な部門がそういう機能を果たすことが出来ればよいのですが、募集・人事編成を始めとした経営・運営面での重要案件に溢れ、専門性の高い情報を理解共有するような機会が薄いというのが現状です。大学入試のみならず、ICTや観点別評価・コンプライアンスなど複合的に学年・分掌に関わることが多く交錯する中、さらに働き方改革・コロナ禍での会食の自重なども相俟って、「忙しさの中のすれ違い」が当然化しているように思われます。

生徒は活動型授業が平準化しつつある一方で、教員は各々上記の忙しさの中で、「協働」がますます困難になっているというジレンマに陥っています。「セクト主義に陥っている」と断ずるのは簡単ですが、何故そういう状況になっているか、その要因を除去することこそが肝要です。

学校という組織の構造的な脆弱性

授業を拝見したり、会議に参加させて頂く中で感じるのは、「学校現場は一般企業と比較して、構造的に仕事で孤立しがちである」ということに留意すべきだということです。学年・分掌・教科・委員会・クラブ活動・プロジェクトという所属がマトリクス型に複雑に入り組んで、一人の教員の役割が定義されます。その結果として、一人ひとりの仕事の視点が異なるのです。

授業や担任業務は、一義的にはチームではなく個々の先生が行う業務です。こういった業務には、フォローが不充分になるというリスクが潜在します。一方で、委員会やプロジェクトのような業務では、所属人数の多さと案件の大きさの中で、責任や意思決定の所在が見えなくなることがあります。こうした両極端な事象が当たり前になると、「誰も私の仕事を知らない、私も他の人の仕事がわからない」ことが常態化しかねません。このような組織構造になってしまうと、「変化に対して迅速に情報を共有し、柔軟に対応を最適化する」ことへの脆弱性が生じてしまいます。

脆弱性をカバーする2本の柱

では、どういう組織を目指すべきなのでしょうか。学校教員という業務のフォーマットを再編するのは確かに難しいかもしれませんが、以下の2本の柱が大切だと考えています。

1. 出来るだけ組織をシンプルにし、とりわけ委員会とプロジェクトを削減すること
2. 新人と若手に対するバディ機能を整備し、日常的な連絡相談と授業/指導のOJTを強化すること

この他にもたくさん挙げられますが、まずこの2つを整えることで、正しい「バッファ」が生まれ、情報が共有され、授業をはじめとする他者の仕事が可視化されていきます。これらを通して、メタ認知が構成されること(=自分の仕事や立ち位置を客観的に理解できていること)が重要なのです。

「傾聴力と弱音力」が組織を強くする

ミドルリーダー研修をさせて頂く中で、私は「強い学校組織とはどのようなものか」を良く問い掛けています。誠実で責任感の強い先生方が多く、「一人一人が実力を高めて、責任をしっかりと負うこと」などといった回答が目立ちます。確かにそれが叶えば素晴らしいことなのですが、それは「組織」を強めることではなく、「個人」を強めることに過ぎません。そして、人的資源は無尽蔵ではないのです。

蓋し、強い組織には「傾聴力と弱音力」こそが最重要です。冒頭に記した史記のエピソードがまさにそれを表しています。

―――「大人物はどんなに小さな意見でも取り入れて見識を高めていく」

胸を張って無理をして、全部自分で背負いこんで、情報も責任もシェア出来ない。かつて日本人の働く姿勢として多くみられたそれは、もはや学校人の模範的で持続可能な仕事のスタイルではありません。

教育世界は今大変革の激動に呑みこまれています。その荒波を乗り越えていく為に必要なのは「ミーイズム」に支配された強靭な個人的泳力なのではなく、他者の声に耳を傾け、
自分の弱さを自覚し、他者に笑顔で「手伝って」と素直にお願いできる力であると思います。
情報をシェアし、他者と協働する―――まさに現代的な授業力にも繋がるそうした志向が
教員と学校の未来を拓くものになっていくはずです。

第1回はコチラ▼

大学入試改革と学校現場 | 第1回 共通テスト再編第二章 | 教員採用、教員募集のE-Staff

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