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私立学校の教員を目指す人が知っておくべきこと

2018/07/30 (最終更新日:2022/11/24)

「教員」という職業は、採用主体から見れば大きく二つに分かれます。一つは、地方自治体が採用する公立学校教員、もう一つは学校法人が採用する私立学校(私学)教員です。
どちらも、児童生徒を対象に授業や生徒指導を行う点は同じですが、求められる資質・能力、細かな職務内容については、異なる部分も少なくありません。今回は「教員」という職業的観点から、公立学校と私立学校の違いを見ていきたいと思います。

私立学校と公立学校は、公教育の両輪である

全国にある私立学校は、小学校・中学校・高等学校を合わせて2,345校(2017年5月1日現在)。公立学校が3万2,921校ですので、全体から見れば1割程度ですが、中学校と高等学校のみを見れば、私立学校は全体の約14%に上ります。特に首都圏や京阪神地域には数多くの私立学校があり、教員を目指す人たちにとっては外せない選択肢の一つといえるでしょう。

私立学校に対し、自由になんでも行えるというイメージをもっている人も多いかもしれません。その認識は、おおむね間違っていません。多くの私立学校は、既存の枠にとらわれない自由な発想の下で、先進的・独創的な教育実践を展開しています。「アクティブ・ラーニング」にせよ、「探究型学習」にせよ、「シラバス」にせよ、いち早く採り入れ、成果を上げてきたのは私立学校です。

一方で、勘違いしてはならないのは、学校教育法をはじめとする法規の多くは私立・公立に関係なく適用される点です。たとえば、学校教育法第11条にある「体罰の禁止」は、私立学校にも適用されます。「うちの学校は子どもを厳しく育てる」といって、児童生徒を叩くような行為は、既存の枠にとらわれない私立学校だからといって許されません。もちろん、学習指導要領も適用されるので、教科や教科書を全く無視して授業を進めることは許されません。

公立学校と私学、職場的に見た違いは?

職業として見た場合、私立学校教員と公立学校教員との間には、どのような違いがあるのでしょうか。

給与・待遇、職場風土、勤務体系など、細かな違いは多々ありますが、最大の違いは、多くの私立学校には「異動」がないことです。大学新卒で採用されれば、私立学校の場合は定年までの40年近くにわたり、同じ職場に勤めます。この点は、3~7年で違う学校へ異動する公立学校との大きな違いといます。

また、私立学校の大きな魅力の一つは、先進的な教育実践に関われたり、最先端の施設・設備を活用できたりする点です。生徒とともに海外へ研修に行ったり、大学や企業等に出向き産学連携プロジェクトに参加したり参加したりする機会も、公立学校より豊富です。そうした恵まれた職場環境の中で、自身の思い描く教育実践を展開していくことができるのです。

私学の教員になるまでの道のり

公立学校教員の採用が、「教員採用試験」で一元化されているのに対し、私立学校の採用形態はさまざまです。

専任教諭(無期雇用)の公募は行わず、常勤講師や非常勤講師として勤務している教員から、専任教諭を登用している私立学校もありますが、最近は専任教諭を直接採用するケースも増えてきています。また、東京都のように、「私学教員適性検査」を合同で実施し、その結果を(1次試験的に)活用しながら、学校独自の採用選考を(2次試験的に)行っているような場合もあります。

採用試験の主な内容は、公立学校と同じく、筆記試験(専門教科や教養、小論文)、面接試験、模擬授業などで構成されます。筆記試験の難易度はまちまちで、その学校が目指す進学実績などが、教員に求められる学力の目安となります。

面接は多くの場合2~3回程度は行われ、その学校が持つ教育理念や校風などにマッチしているかなど、相性や適性がチェックされます。模擬授業も、ほぼすべての私立学校で行われ、中には在籍する児童生徒を前にして、授業を行う学校もあります。

私立学校の採用は、年度につき2~3名であることが一般的です。加えて、必ずしも予定数を採るとは限りません。採用を見送る場合もあれば、予定よりも多くの数を採用する場合もあります。この点は、公務員の採用予定数を逸脱しない公立学校との大きな違いといえます。

面接試験では、志願者の専門性や人間性とともに、その学校の教育理念を理解しているか、共感しているかもチェックされます。この点は、民間企業の就活と同じで、志願する学校の校訓や建学の精神、歴史、教育方針、校風、特色ある取り組みなどを、きちんと研究して臨む必要があります。

私学を志願する際に必要な心構え

先述したように、私立学校に専任教諭として採用されれば、何十年もの長期間勤め続けることが出来ます。それだけに、志願する学校は、教育方針・校風などを踏まえ、慎重に選ぶことが大切です。私立学校には「堅実」「活発」「厳格」「リベラル」などさまざまなカラーがあり、水が合わなければ長く勤めることはできません。

ちなみに、私立学校には公立学校のような「異動」はありませんが、大きな学校法人の場合は、系列校への異動や 、他の私立学校に「転職」する人はいます。優秀な教員が、縁あって他校に移籍するようなケースも珍しくありません。

私立学校教員の採用選考は、公立学校の教員採用試験とは異なる対策が求められます。自分が志望したいと思う学校があれば、まずは建学の精神や教育方針、校風、特色ある取り組みなどをよく調べた上で、自身がこれまで培った経験をどう生かせるかなどを考えてみてください。

佐藤 明彦(教育ジャーナリスト/『月刊 教員養成セミナー』前編集長)

◆E-Staffラボ 編集後記 (2022/11/24)
本記事は2018年にE-Staffラボに掲載されてから多くの教員志望者の方に閲覧いただいております。
この記事が公開されて以降、新型コロナの流行に伴う生活様式の変化に伴い、私立中学・私立高校の教員採用市場にもさまざまな変化がありました。ある私立高校の教員採用試験においては、オンラインでの学校見学会・一次面接が行われました。また、以前では一部の学校でしか見られなかった「応募書類のWEB提出」なども、複数の私立中学・私立高校 などで取り入れられました。
時代の変化とともに、私立学校の教員採用試験の形式は変わっていくものだなと実感しています。

こういった私学の変革は、もちろん教員採用試験だけではありません。 GIGAスクール構想よりずっと前から導入され、工夫されてきていた ICT教育の更なる進化を代表として、より多様な教育の形に日々挑み続けているように感じます。
そんな魅力的な教育の取組みや、小学校・中学校・高校等の私立教員採用に関する情報をこれからも発信してまいります。
(E-Staffラボ編集部)

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