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教員だから知っておきたい、私学の財源のリアル ~少子化時代に、私学が持つべき収益戦略とは~(前編)

2025/01/31

「教育」に「お金」は切り離せない要素です。どのような教育を提供するにもまず原資が必要であり、どこへ重点的に投資していくかの経営的判断も問われるからです。
しかし当然ながら、すべての学校が潤沢な資金を持っているわけではありません。限られた財源でいかに質の高い教育を提供していくか、経営陣も現場の先生方も知恵を絞っています。そこで当記事では、学校がお金を集めるアプローチについて、リアルな現状をふまえながら「私学とお金」について一緒に考えてみましょう。

私学はしっかり収入を得なければならない

そもそも、学校法人は私立学校の運営をするための非営利組織です。一般的な企業組織とは異なり「収益」を目的としていません。「収益を上げてはいけない」わけではないのですが、それはあくまでより良い学校運営に還元するためのもの。新しい教育活動を取り入れ、設備投資をし、優秀な教員を雇用するなど、質の高い教育を提供し続けていくために、「収入」は絶対に必要なのです。

その前提において、学校法人の収入源はおおむね三つに分けられます。(1
)学費(授業料)、(2)(国や行政からの)補助金、(3)寄付です。それぞれについて見てみましょう。

学費収入のみで経営がまかなえる学校は少数派

このうち、最もスタンダードな収入源となるのが「(1)学費」です。東京都が都内の私立校を対象に実施した調査によると、学校法人の収入源のうち50%強がこれに該当しています。

しかし実質上、この「(1)学費」だけで運営費用を賄えている学校は少数派で、全国規模の知名度を誇る進学校など、一部のブランド校に限られています。学校が提供する教育を「商品」と称するのは語弊がありますが、あえて分かりやすくその表現を用いるなら、主力となる「商品の売上」だけでは経営が立ち行かない収益構造になっているということです。

学費収入の多寡は、当然ながら生徒の数に左右されます。しかし、少子化により分母となる生徒の絶対数が減り続けているのは周知の事実です。1学年で50人×20クラスのような大規模校が当たり前の時代ではありません。今や35人学級がスタンダードで、学校としての定員数もあるため、実質上の“天井”も存在します。したがって、単純に「学費収入が足りなければ生徒数を増やせば良い」という問題ではないのです。授業料単価の安易な値上げに踏み切ることも難しいでしょう。

教育にお金を使わない国・日本

次に「(2)補助金」を見てみます。前述の東京都の調査では、学校収入における補助金の割合は40%弱。重要な収入源の一つなのは事実ですが、ここをふくらませていくのはハードルが高いと言わざるを得ません。どこにいくら補助するかは国や自治体、私学協会などが決めることであって、学校単体の努力や工夫だけで大きく増やせるものではないからです。

「教育は国家百年の大計」という言葉をご存じの方は多いでしょう。長期的な視野で国の未来を見据え、人を育てること、そこに投資することが国家としての要であるという意味です。しかし残念ながら日本は、先進国の中でもとりわけ「教育にお金を使わない国」として有名です。OECDの最新調査でも、教育関連の政府支出の割合は36カ国中3番目に低いという結果も出ています。

これはこれで改善が必要なのは事実ですが、現状において補助金の大幅増額に期待する学校運営をするのは現実的ではないと言えるでしょう。

全体に占める割合は少なくとも、欠かせない「寄付金」

すると、どの私立校も「(3)寄付金」をいかに集めるかが大事になってきます。確かに、私立校の収入は90%以上が学費と補助金で占められており、寄付金収入は全体の3%弱と決して多くはありません。しかし、学費収入や補助金を急増させるのが難しい現実を鑑みるに、寄付も決して軽視できないファクターであり、むしろ、寄付金なしで運営を回している私学はほとんどないのが現状です。規模や金額が大きくなくても、私立校の経営において重要であることは間違いありません。

とは言うものの、寄付は基本的に寄付者の任意で行われるもの。義務や強制で徴収するお金ではありません。では、各校はどのようにして寄付を募っているのでしょうか。実は近年、この「寄付」のあり方をめぐって、少し変化も生まれてきているようです。後編ではここにスポットを当て、「学校が寄付金を集める」手段について紹介してみたいと思います。

→続きを読む 教員だから知っておきたい、私学の財源のリアル  ~少子化時代に、私学が持つべき収益戦略とは~(後編)

この記事はエデュケーショナルネットワーク 広報支援課(Yellz運営チーム)が監修しました。学校応援オンラインコミュニティ「Yellz」はこちらから→ https://yellz.jp/

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