日本語教員の資格は必要?仕事のやりがいは?~日本語教師のお仕事(後編)
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留学生や労働者など、日本で暮らす外国人が爆発的に増加しています。これに伴いニーズが高まっているのが『日本語教員』です。2024年に『登録日本語教員』として国家資格化もなされ、ますます注目を集めています。では、日本語教員は実際に現場でどのような仕事をしているのでしょうか。どんな人が、どんな働き方をしているのでしょうか。実例を見てみましょう。
国家資格が必要なのは「認定日本語教育機関」で働く場合のみ
日本語教員の職場は多岐に渡ります。日本語教育機関(いわゆる日本語学校)、一般の学校、自治体、企業などさまざまです。このうち、国の認定を受けた「認定日本語教育機関」では、国家資格『登録日本語教員』保持者しか指導にあたることはできません。しかし現状は、その他の勤務先では、民間資格の有資格者や無資格の人にも活躍の門戸が開かれているので、チャンスはたくさんあります。
文部科学省の調べ(※)によると、2023年の日本語教員等の数は4万6,257人。勤務(雇用)先の内訳は、法務省告示機関(日本語学校など)が28.4%、国際交流協会20.1%、任意団体13.7%、地方公共団体13.7%、大学等機関9.8%、教育委員会7.2%でした。職務別では常勤が15.6%、非常勤が34.1%、ボランティアが50.3%となっています。この記事では、資格の有無が問われず、かつきちんと報酬が発生するケースの中から、学校と地方公共団体で活躍する日本語教員の事例をご紹介します。
(※令和5年度日本語教育実態調査結果)
https://www.mext.go.jp/content/20241101-mxt_chousa01-000038170_02.pdf
教師との兼務や、複数の学校を掛け持ちで活躍する人が多数!
例えば公教育下のいわゆる「学校」では、兼務や非常勤の形で活躍している人が多いのが現状です。現職の教師と日本語教員を兼ねている人もいますし、「留学生サポートスタッフ」などの名称で、日本語指導の専任者として複数の学校を掛け持ちする人もいます。
生徒となるのは、主に中学校や高校の留学生です。学校内で別枠の授業時間が組まれており、日本の学校での授業についていけるように、中1くらいまでの国語(漢字や文法など)を指導するのがメインの業務。おおむね、週4~6コマ程度の授業が組まれていることが多いようです。
日本語教員の属性や顔ぶれもさまざまで、子育てが一段落して社会復帰をする主婦の方の活躍事例もよく見られます。ある元教員の女性は、夫の仕事の都合でしばらく海外で暮らし、帰国後に民間資格を取得して日本語教員になりました。もともと国語教員だったことが影響して 、個人的にも「日本語への学びを深めたい」という意欲があり、自己成長の場としても生かされているようです。英語や中国語の話者である生徒が多いため、それらの言語スキルがあるとより便利ですが、授業自体は原則として日本語で行います。外国語が話せなくても業務に大きな支障はありません。
日本語指導だけでなく、勉強もフォロー対象となる場合も
地方公共団体(自治体)で働く場合は、日本に定住している外国人家庭の子どもたち、あるいは海外生活が長く日本語が不得手な日本人の子どもたちが生徒となります。年齢層はおおむね小4~中3程度。彼らのサポートのために自治体が設置している塾などが主な職場です。
塾では、日本語指導以外に「学校の勉強のフォローもしてほしい」といったニーズもあります。生活言語としての日本語はある程度できるものの、日本語の授業に遅れがちな子どもたちや、日本で進学したい受験生などの学習サポート全般が仕事だと考えるとよいでしょう。授業は個別or少人数指導が多く、勤務は夜に1コマ2時間程度を受け持つパターンが一般的です。そういう意味では学校と同じように、常勤よりも非常勤や兼任で働く人が中心だと言えます。学校での日本語教員と兼務する人や、本業を持ちながら副業として働く人も多いようです。
なお、日本語サポートが必要な子どもたちには、基本的に『JSL(Japanese as Second Language)カリキュラム』に沿ってプログラムが作られています。具体的な内容は地域により異なりますが、ある自治体では、
まず1週間ほど「プレクラス」で日常会話の練習をする
→学校に通いながら通級制度の形で「センター校」に通って1年間学ぶ
→その後も塾などで支援を続けていく……
という形が取られています。日本語教員志望者がどこに配属されるかは自治体の状況にもよりますので一概には言えません。ただし、センター校に該当する機関では、何らかの有資格者が指導することが多いようです。
ライフスタイルに合わせた働き方で、やりがいもたっぷり!
気になる収入は、学校で週4コマ程度受け持つ形で4~5万円/月、自治体では多い人で5~6万円/月ほど。いずれにせよ、兼務や掛け持ち、副業の勤務形態が多くなっています。フルタイムで働くというよりは「ライフスタイルに合わせて働く」イメージかもしれません。
一方、指導によって生徒が「(日本語検定などの)資格取得ができた!」「話せる語彙が増えた!」などの喜びをダイレクトに感じられるシーンが多く、日本語教員の多くがそれらをやりがいに挙げています。決められた仕事を淡々とこなすよりも、生徒に寄り添いながら、自分で工夫やアレンジをして指導案を作ることを楽しめる人に向いている仕事です。「教員免許は持っていないけれど、教える仕事をしてみたい」「困っている外国人を助けたい」という方は、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
全編も読む↓
国家資格化で何が変わる? 日本語教員への第一歩~日本語教師のお仕事(前編)