文部科学省の調べでは、平成29年度、小中学校における不登校児童生徒の数は14万人と過去最多となりました。また、不登校には至っていないものの不登校傾向にある中学生は33万人いるという調査結果もあります。近年の研究では不登校の種類や特徴もわかるようになってきました。新たな法律により「学校に復帰する」以外の選択も可能になった今、不登校のイメージは変わりつつあります。しかし、いじめなどとの関連性から決して軽く見ることはできません。担任1人で抱え込まず学校が組織的に対応することが必要です。
不登校は14万人
中学校ではクラスに1人
そもそも「不登校」とはとのような状態を指すのでしょう? 学校教育における「不登校」は、「いじめ」と同様に文部科学省がその定義を次のように公表しています。「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、 病気や経済的な理由による者を除いたもの」としています。
学校現場では不登校の問題は深刻です。その数が減らないからです。文部科学省が行う「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査」の平成29年度調査によると、全国で不登校の子どもは小学校で3万5,032人、中学校10万8,999人、高校4万9,643人となっています。割合は小学校0.5%、中学校3.2%、高校1.5%となっています。義務教育段階である小中学校の合計は14万4,031人で、これは過去最多となりました。中学校の場合、クラスに1人は不登校の生徒がいる、と考えることができます。
日本財団が2018年10月に12~15歳の6500人を対象にインターネットで調査したところ「不登校傾向にあると思われる中学生」は10.2%、33万人にのぼるという結果が出ました。潜在的には3倍もいる、という数字です。いずれにしても不登校やその傾向にある子どもは珍しくはないことがわかります。
不登校状態を2つに分ける見方
では、いつ、どのようなタイミングで不登校が増えるのか、国立教育政策研究所が不登校の子どのも数を詳細に分析したところ、次のような傾向がわかってきました。
・不登校の子どもの何人かは、翌年度に不登校状態が解消する
・中学校ではどの学年でも同じ程度の不登校の生徒が出現する
これまでの調査から、不登校になる子どもは中学1年、2年になるときに急増すると考えられてきました。「前年度から不登校がずっと続いている子ども」と「新しい学年になって新たに不登校になった子ども」とが一緒にカウントされていたからです。研究所の分析では不登校が解消される子どもがいる一方で、新たに不登校になってしまう生徒数が上回るため急増しているように見ると結論づけています。
先生は1人で抱え込まない
最近は不登校経験を持つ著名人が、当時の経験を公表することが増えてきました。「学校へ行かなかった時期をきっかけに、熱中できるものを見つけ、それが今の成功につながっている」といったストーリーは不登校のマイナスイメージを変えつつあります。「学校がいやなら無理して行く必要はない」「ほかの方法で学べばいい」「好きなことを伸ばせばいい」など多様な考え方も広がってきています。
平成29年2月に施行された「教育機会確保法」では、不登校の子どもたちがフリースクールなど学校以外で教育を受ける機会を国や自治体が支援することが明記されました。「学校復帰」以外の不登校対応が認められるようになったのです。
同法は不登校の子どもが「学校を休んでもいい(休養)」と明言した画期的な法律となっていますが、だからといって「不登校なら学校に来なくてもいい」と安易な結論に結び付けるのは避けたいものです。フリースクールといっても運営母体や教育内容にばらつきがあり、自治体による補助もこれから整備されるところだからです。また、高校では出席日数が進級に与える影響は大きく1つの教科で3分の1以上欠席してしまうと単位が取れなくなってしまいます。
3日続けて休む生徒がいると、ほとんどの先生は大変心配します。いじめや友人関係が背景にあるのか、勉強がわからないからか、先生と合わないからか…などと気をもみます。それは保護者も同じでしょう。近年はプライバシー保護の問題から家庭訪問は難しくなっています。欠席が続く子どもへの対応は、学校ごとにルールが決まっているところもあるでしょう。教員は1人で抱え込まず、学年や管理職、養護教諭、スクールカウンセラーなどと連携した対応を取り、「学校復帰」だけでなく、その子どもが将来、自立して暮らしていけるかという見通しを持ちながらかかわっていくことが求められます。
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