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第3回 リレーションシップ~保護者対応研修[STC研修レポート2022]

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教育は信頼関係を前提として行われるものです。しかし、最近では学校が生徒・保護者と信頼関係を結ぶことが難しくなっています。生徒とよい関係を結び、保護者とも信頼関係を構築するにはどうすればよいでしょうか。アドラー心理学に基づいたコミュニケーションスキルを、教育コンサルタントの中土井鉄信氏の解説で学んでもらいました。

■研修講師

保護者対応 講師 中土井鉄信氏

中土井 鉄信 氏
合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表
NPO 法人ピースコミュニケーション研究所理事長

心の構えを意識 求められるYES-YESの関係

教育現場において、生徒や保護者との信頼関係は非常に重要なものです。しかし、昨今の学校では、生徒や保護者と良好な信頼関係を築くことが難しくなっています。授業や生活指導も、生徒との信頼関係なしには上手くいきません。保護者と二人三脚で生徒の成長を支えるにはどうすればよいでしょうか。

講師は教育コンサルタントの中土井鉄信氏です。2009年より3年間、静岡県の私立中高一貫校で学園改革担当理事を務め、その後は全国で講演活動を行っています。

中土井氏はまず、生徒へ接する時の心の構えとして「4つの構え」の例を出します。

1.自分:YES/他人:YES   2.自分:YES/他人:NO

3.自分:NO/他人:YES       4.自分:NO/他人:NO

「学校の先生は2.のパターンが多い」と中土井氏は指摘します。つまり、自分は知識が豊富で、子どもたちは何も知らないと考えてしまうのです。逆に3.の「自分はNO 他人はYES」の構えも、無責任です。4つの構えの中で、めざすべきは「YESとYES」の関係、さらに自分と生徒は対等だという気持ちが大事だといいます。

次に、生徒や保護者を理解するための、心理学の基礎的な解説がありました。先生が内心で、「生徒は何度言っても聞いてくれない」「こんな子どもを育てて保護者はひどい」と思っていると、信頼関係は築けず、ますますクレームが多くなってしまいます。人間には無意識の防衛本能があり、様々な言い訳をしてしまいます。そのことに共感し、「人間とはそういう生き物」と受け入れて、保護者や生徒の言動を受け止めることが必要だと中土井氏は語ります。

その後、発達心理学をベースにした、思春期の子どもの状態についての解説がありました。15歳前後から人間は自律期に入り、不安定になって揺れてきます。まさに中高生の時代です。そのため、服装や言葉が乱れることもありますが、自我の確立期である中高生時代には、周囲の大人が存在を承認してあげることで安定し、中でも思春期に先生から承認されることは、非常に重要な事だと中土井氏は強調します。

ペアワークで生徒への接し方を振り返る

ここで、簡単なペアワークを実施しました。隣の人とお互いに1分間無言で観察しあい、その人の良い所を10個以上発見することをめざします。その後、メモの内容を1分間相手に伝えあいます。先生たちはひっきりなしに相手のいい部分を言い続けます。

次に、中土井氏は「では、次に悪いところを指摘し合うのはどうでしょう?」と言います。「言いたくない」と、受講者たち。しかし、そこで中土井氏は「でも、先生方は生徒には言っていますよね」と指摘します。これには、どの受講者もハッとしたようです。

これは「当たり前にできていることを発見する」ワークでした。実際、先生たちは「しっかりメモを取っている」「よく話を聞いている」など、当たり前にできていることしか発見できていません。しかし、そのことこそが重要と中土井氏はいいます。生徒に対して「当たり前にできていること」に注目することが承認の第一歩であり、最近では様々な所で言われる「心理的安全性」が確保されるという指摘は、先生たちに大きな気づきがあったようです。

どうやったら保護者の信頼を得られるか

その後、いよいよ実際の保護者対応の具体的な説明に移りました。特に私学の教育において、「教育はサービス業」という表現もされますが、中土井氏は「サービス業」と「教育サービス業」は違うと指摘します。サービス業では受益者を不愉快にさせることは決してないが、教育サービス業では子どもが不愉快であっても、必要な指導をしなければならないことがある、と中土井氏は指摘します。

子どもが態度変容することで、初めて保護者は満足すると中土井氏はいいます。そのためにはやはり生徒と先生の信頼関係、コミュニケーションが大事です。また、子どもの良い方向への態度変容を促すには、自信をもたせることが必要で、自信をもつためには・やり方がわかっている・可能性があると思えることが必要です。この2つを提供するのが、教師の役目だと説明がありました、

保護者対応の具体的なプロセス

最後に保護者対応の具体例が紹介されました。保護者が自分の気持ちを訴えてきたり、クレームを寄せてきたりした時の対応プロセスとして

1.「お母さん(お父さん)はそんな気持ちなんですね」と、ゼロベースになるまで話を聞く

2.「気持ちはわかりました。事実かどうか確認させてください」という。あるいは、「事実として私は理解しているのは~」と説明する。

3.保護者の知らない生徒のよい所を教える(特に精神的な面の成長など)

4.一緒に応援していこうという働きかけをする

という流れが紹介されました。

また、生徒・保護者対応では教員は理不尽な思いをすることもありますが、学ぶ場においては学ぶ側が強者の立場であり、生徒に「学ぶ合意をとりつける」ことが大切だということが強調されました。最後に、「教科を教えるのはアプリでも出来る。学ぶ意味を教えることが、みなさんの仕事です」という励ましの言葉で講義が締めくくられました。

受講者の振り返りでは「受講前は保護者対応のテクニックを習得しようと意気込んでいた。しかし、保護者対応に必要な信頼形成は、教育指導一般において重要であることを痛感した」「教員同士の間にもラポール形成を図って教育観を語り合いたい」など、保護者対応にとどまらない前向きな感想が多く寄せられていました。

■研修概要
日時:2022年6月16日(木)17:00~19:30
場所:対面形式

■講師紹介:中土井 鉄信氏

合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表/NPO 法人ピースコミュニケーション研究所理事長

1961 年、神奈川県生まれ。国学院大学文学部哲学科卒業。大学在学中より教育問題に強い関心を持ち、生活指導の権威である竹内常一教授に師事。卒業後は、学習塾で小学・中学・高校生の学習指導に関わり、大手老舗学習塾等で経営改革も担う。2001 年 4 月、教育機関専門のコンサルタント会社、(合)マネジメント・ブレイン・アソシエイツを設立。2009 年から3 年間、静岡県浜松市の私立中高一貫校で学園改革担当理事を務める。現在は全国の教育委員会などの依頼を受け、教員研修、保護者・生徒向けの講演、さらに学習塾・学校の経営指導のために全国各地を奔走。

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